「シェアリングエコノミー」と聞いてあなたはどのようなサービスを思い浮かべるだろうか。「メルカリ」「Uber」「Airbnb」など利用をしたことがある人も少なくないだろう。「Udemy」も個人の持つ知識やスキルをオンライン上でシェアをする「シェアリングエコノミー」の1つである。
そして今年、世界で最も勢いのあるシェアリングエコノミーサービスを展開する「WeWork」が日本への進出を開始した。
10月18日、の日、渋谷BOOK LAB TOKYOにてBusiness Insider Japan主催によるWeWork日本法人代表クリス・ヒル氏のトークイベントが開催された。
「WeWork」とは
WeWorkは、現在世界18カ国50都市以上にコワーキングスペースを展開する注目のユニコーン企業だ。2018年初頭には六本木、新橋、銀座でのスペース開設することを発表した。
世界最大のコワーキングスペースと言われるWeWorkであるが、ヒル氏は「我々はコワーキングスペースではなく、グローバルコミュニティなんだ。」と言う。
WeWorkの会員になると、世界中のメンバーとつながるグローバルネットワークを利用できるようになる。各拠点では、会員同士のコミュニケーションを促進し、イノベーションを生み出すコミュニティマネージャーのサービスを受けられる。単にその場にいる人同士の交流を作り出すだけではなく、会員のデータベースに基づき「誰が何を求めているか。」をデータからマッチングをさせるのだ。
このサービスを同社では重視しており、日本でもトレーニングをされた日本人のコミュニティマネージャーが配属される予定だ。こうしたローカライズした運営によって、コワーキングによる交流が少ないといわれている日本においてもイノベーションが起こりやすい環境を作ろうとしている。
写真2点WeWork公式サイトより https://www.wework.com/ja-JP/
日本進出の始まりは孫正義氏の言葉
ヒル氏は、米国本社の初代COO(最高執行責任者)だった人物で今回の日本進出の立役者だ。日本進出を決めたきっかけはソフトバンク会長の孫正義氏の言葉だったという。
ある日、インド政府主催の会食で孫正義氏と出会い生き方や働き方について語り合い意気投合。「将来的には日本への進出も考えている」ということを伝えたところ、「働き方改革」で関心度が高まっている今こそすぐに日本でのビジネスを始めるべきだと「もっと燃料を投下すべきだ」と言われたことが後押しとなり日本進出を決意したという。
そしてソフトバンク社との合弁会社であるWeWork Japanが誕生したのだ。ちなみにソフトバンク社は今年から社員の副業を認めるなど働き方改革を企業としても積極的に推進している。
ターゲットはミレニアル世代
ミレニアル世代とは主に1980年代以降に生まれ、2000年代に成人になる人をいう。インターネットが普及した環境で育った最初の世代で多様な価値観を受け入れ、仲間とのつながりを大切にする傾向があるとされる。
そんなミレニアル世代は2020年には全世界の労働人口の50%になるといわれており、WeWrokは彼らをメインターゲットに事業を展開する。起業したい、イノベーションを起こしたいというエネルギー溢れる若い世代の支援をすると共に、伝統的な日本の大手企業にとっても若い優秀な人材を発掘できる場にしていきたいとヒル氏は言う。
イベントでは、ミレニアム世代の代表として「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」西山アンジュさんと「複業研究家」西山創一郎さんが登壇しトークを行った。
日本の課題はいかに大企業を巻き込みイノベーションを起こさせるか
日本のコワーキングの現状では、大企業の利用はそこまで進んでおらず、個人事業主やフリーランサーが黙々と仕事をする場になりがちだ。個人と大企業とのコラボレーションがうまれるケースが少ない。その現状を打破する方法として先述したコミュニティマネージャーの活躍が期待される。また、すでに2018年から開設されるスペースへの利用の問い合わせが大手企業を含め殺到しており、ヒル氏は自信をのぞかせている。
「働き方改革」による日本企業の新しいワークスタイルに対する関心度の高まりを感じるヒル氏は、「日本は今ティッピングポイント(物事が急激に変化する時点)に達しつつある」と表現した。
WeWorkの日本展開が、日本の社会を変える大きな後押しになるのではないかと期待を感じさせられるヒル氏の情熱溢れるトークイベントだった。
「働き方改革」により自己投資する時間を持てるようになったり、副業として新しいビジネスを始めようとする人が増えたりといった変化が起きるだろう。そのときUdemyはプラットフォームとして新しいスキルアップを始めたり、講師として講座を開講して収入を得ることにチャレンジする機会を提供できるサービスになると考えられる。
会の終わりにヒル氏から伝えられた「生きるために仕事をするのではなく、人生を作るために仕事をしてほしい」というメッセージが印象的であった。