全ての社員をデジタル人材へと育成する体制を構築 年間300件のDX案件を推進


- 企業名
- 住友商事株式会社
- 業種
- 総合商社
- 従業員数
- 単体:約5,390人 連結:74,920人
金属事業、輸送機・建機事業、インフラ事業、メディア・デジタル事業、生活・不動産事業、資源・化学品事業の6つの事業を柱とし、全世界に展開。
あらゆる業界・業種を問わず、DXの重要性に注目が集まっています。これからの社会では、DX推進により事業の質を高め、それを支える人材を育んでいくかが非常に重要となります。
住友商事株式会社は、2018年から「DXセンター」を開設し、DX推進と人材育成体制の構築を図っていきました。住友商事株式会社 デジタル事業企画部長 荒牧俊一さんに同社のDX推進体制についてお話をいただきました。後半は、 荒牧さんと株式会社ベネッセコーポレーション Udemy Businessの事業責任者である飯田智紀が、全社的なDX化の推進方法などについて話し合いました。
※本記事の内容は、日経クロステックEXPO2021での講演・対談内容を一部抜粋・加筆したものです
目次
DXセンターを設置し推進・人材育成体制を構築
住友商事は、1919年創業以来、社会の変化に合わせて柔軟に対応を図ってきました。近年では、DXの促進とDX人材の育成に3年半以上にわたり取り組んでいます。同社のDXの取り組みは、テクノロジーの活用を成長戦略における重要な軸に据えたことに端を発すると、デジタル事業企画部長の荒牧俊一さんは振り返ります。

「2018年に、社内のDXを推進するDXセンターを15名で発足させました。その後、グローバルでの事業推進にも対応できるように、75名、150名と人員を増やしています。意志決定の高度化やコスト削減にDXを活用し、DX案件数は2018年の70件からスタートし、今年度は300件にまで増えました」
全社的なDXの促進を進めてきた同社ですが、DX化の件数を追うわけではないと荒牧氏は続けます。
「大事なことは、いかにDXを実現していくか、いかにインパクトのあるDXを行えるかといった質の部分だと考えています」

あらゆる角度からDXへの社内意識改革を促進する
同社では、DXの質を高めていくために人材の育成にも力を注いでいます。支援体制について、荒牧氏はこう語ります。
「DXは現場で事業を伸ばしていくためのもの。そのため、主役は事業部門や935社あるグローバルで事業会社です。現場の支援をするのが、DXセンターである私たちの役割です」
同社の「社内意識改革・デジタル人材の育成」で重視したことは、社内モメンタムの醸成です。オフラインとオンライン、双方の取り組みを行い、社内でDX推進するためのアプローチを続けてきました。オフラインの取り組みでは、部門・地域組織 18拠点へ延べ3,000〜4,000名に向けてDXに関する説明会を実施。また、業務部長や本部長といったマネジメント層との個別定期打合せも重視しました。オンラインの取り組みでは、グローバル含めた幅広い社員を集めた説明会はもちろん、若手から中堅を集めた少人数の説明会を設けるなど様々な工夫を凝らしました。
「DXは課題解決のツールです。現場で何が課題かということと、DXを用いてそうした課題をどのように解決するかが、セットで話し合われるべきです。心理的安全性を担保するために限られた社員で話し合う場を設け、現場での悩みを話し合い、その解決策の議論にまでつなげる機会を設けました」(荒牧 氏)
他にも、各事業会社の課題とその解決策としてのデジタル化、あるいは失敗例に到るまで情報を日々発信する「ニュースレター」の運用。DXの事例や推進者のつぶやきを伝える「DXチャンネル」、デジタル技術を紹介する「技術ライブラリ」といった発信を続け、社内の気運を醸成していったそうです。
Udemy Businessを活用しデジタル人材の育成を図る
同社は、「全ての人がDX人材である」という前提に立ち、社員を3タイプに分類し、それぞれに対して研修プログラムを実施しています。一つめは、デジタルの素養を備えた「DXビジネス人材」。ここには、若手社員から管理職に到るまで全社員が含まれます。2つめは、ビジネスとデジタル両方への理解が深い「DX推進人材」。3つめは、DX技術を課題や構想に適用する専門家である「DX専門人材」です。

「こうした人材育成の一貫としてUdemy Businessを1年前に導入しました。人材育成の中で重要なプログラムとなっています」と荒牧氏は続けます。
DX人材を3つの領域に分類していますが、「その中でも、特に興味ある分野について力を発揮できるようになってほしい」と荒牧氏は語ります。それそれの得意な分野を組み合わせて、チームとしてのパフォーマンスを向上することこそが、これからの社会に求められる力だと述べました。

年次・経験に応じたビジネス・デジタル両面の研修を整備(同社講演資料より抜粋)
【対談】多様性が事業を推進することにつながる
荒牧さんへ、株式会社ベネッセコーポレーション Udemy Businessの事業責任者である飯田智紀が全社的なDX化の推進方法について伺いました。
飯田:整備されたDX構想を実装して4年目に入りました。これまで、どのようなご苦労がありましたか?
荒牧:DX推進をスタートした当初は、「デジタルを活用していくことで、自社の事業のステップアップを図る」と伝えても、社内においてまったく理解してもらえませんでした。「手間が増えるだけ」と受け取られることもよくありました。そうした誤解に対して、「安全性が高まり、効率と効果が上がります」と一つひとつ説明をしていきました。
飯田:その後、どのようにDXは普及していったのでしょう。
荒牧:各種説明会を実施し、納得してもらえた後は、共感の輪を広げ、さらに研修によって全ての人材がDXの力を備えていけるよう整備しました。現在は、現場の中でDXを活用し、具体的な成果を上げていくタイミングとなっていると感じます。
飯田:今後はDX化をどのように進めていきたいと考えていますか?
荒牧:導入当初は件数も大事にしてきましたが、今後は質を重視していきたいです。課題を分類し、事業課題や経営課題といったより大きなインパクトにつながる課題をDXで解決していくことに意識が向かっています。
飯田:DXにおける質向上にフォーカスをあてた際、導入当初の事例と現在の事例とでは、何か違いがあるでしょうか?
荒牧:初期の頃は、紙やエクセルで行っていた在庫管理をデジタル化するといった、単純な課題解決も少なくありませんでした。現在では、ある商品群を取引件数や地域性などを加味し、グローバル全体で在庫管理するといった煩雑な課題を解決するDX化が求められるようになってきています。こうした課題を解決できれば、より事業にとってのインパクトは大きくなるはずです。お客様に対しても、社内においても、大きな仕組みに影響を与えるDXが不可欠だと感じます。
飯田:すべての社員はDX人材であるという前提で、3タイプに分類していらっしゃいました。それぞれのタイプにどのような成長を期待しているのでしょうか。
荒牧:「デジタル人材」から「デジタル推進人材」へ移行する人もいるでしょうが、全員ではありません。人材タイプを3つに分けましたが、内実は一層多様でグラデーションがある状態です。大切なことは、この多様性であり、自分に足りない部分を持っている人を見つけられたり、そうした人と協力関係を組んだりすることだと考えています。
飯田:社外の知見を取り入れたり、共創したりする上で大事にしていることはありますか?
荒牧:互いに真剣に課題に対して解決したいと思っていることが何よりも大事です。しかし、ビジネスなので「やろう!」と盛り上がるだけではプロジェクトは進みません。それぞれがどれほどの投資をするかといった込み入った話までできるようになると、話が具体化していくでしょう。こうした関係性の中から、当社でもたくさんの共創が生まれています。これからも、新たなDXの可能性を目の当たりにすることを楽しみにしています。
【ご利用者の声】DXプロジェクトでより質の高いアウトプットが可能に
住友商事株式会社DXセンターの細井岳さんにUdemy Businessの活用についてお話いただきました。

「私は、DXセンターにおいて、デジタルテクノロジーを活用して、お客様の事業課題の解決に取り組んでおります。現在、メディアデジタル事業部門に所属しており、テレビ通販会社様やケーブルテレビ様といったお客様を担当しています。例えば、テレビ通販会社様のプロジェクトでは、どのような品揃えをすべきか企画する際、機械学習やAIを活用して意志決定を高度化する案件を担当しています。」
細井さんは2018年までは金属製品のトレードを担当していましたが、希望を出してデジタルに関わる部署に異動してきました。
「当初は実践経験がないためDXに関わる知識や技術を踏まえた提案に少し不安もありました。Udemy Businessで業界の第一人者の方々からDXに関する知識や技術を体系的に学ぶことができ、今では自信をもってプロジェクトが進められるようになったと感じています。例えば、AIによる需要予測に関する講座では、自分で手を動かしながら予測モデルを開発する手法を学び、実践的な知識や技術を身につけることができました。」
DXに関する専門用語や技術について実践的に学習できたことで、AIを用いた需要予測を行うプロジェクトでは、開発を一緒に進めるエンジニアの方の意図を深く理解しながら開発を進めることができるようになったと語る細井さん。ミーティングで基礎的なことを確認する時間が不要になり、プロジェクトにかかる時間が従来5分の1程度にまで短縮できたといいます。
細井さんの感じられたUdemy Businessの利点については、
「まずコンテンツの質と量が上げられます。業界の第一人者から学べ、安心感があります。加えて非常にコンテンツの領域が幅広く、1つの領域においても1時間の講座から数十時間の講座まであり、自分のニーズに応じて学べます。もう1つは、利便性です。いつでも場所を選ばず学べるのはよいですね。再生速度が1倍から2倍まで設定できるので、短時間で効率的に学べるのも魅力だと思います。業務を通じて失敗や成功を積み重ねることも大事ですが、Udemy Businessを通して、体系的かつ実践的に学習することで、効率よくアウトプットの質を高められると感じています」
▼インタビューの様子はこちら(2021年 11月撮影)