Udemy BusinessとWorkdayを連携させ
データを可視化し、戦略的な人事サイクルの構築を目指す
株式会社日本経済新聞社
新聞業界は、大きな変革の時期を迎えています。電子メディアの台頭、若者の活字離れなどの影響を受け、2020年の国内の新聞発行部数は約3500万部、発行部数はピーク時から2000万部近くも減らしています。
日本経済新聞社は、2010年に「日経電子版」を創刊するなど、いち早くデジタル領域に力を入れ、新たな挑戦を続けています。また、同社は人材育成においても変革を進めており、2021年4月から同社の管理職にジョブ型人事制度を導入し、従業員のあらゆる人材情報を管理できるプラットフォームを整備。同時に、人材プラットフォームと連動させる形でUdemy Businessを導入しました。 そこで、今回のジョブ型人事制度導入の背景、Udemy Businessの導入の経緯について、日本経済新聞社のHR本部首藤純さんとHR本部人事部の田邊友子さんに話を聞きました。
INDEX
ビジネスモデルの変革が求められている
日本経済新聞社は、1876年の創刊以来、145年にわたり経済を中心に正確で質の高い情報を届けてきました。日本経済新聞社HR本部の首藤純さんは「新聞社はビジネスモデルの変革を迫られている」と語ります。
「新しいメディアの台頭や若者層の新聞離れなどの影響を受け、国内の新聞発行部数は年々減少し続けています。メディア業界で生き残るために、我が社は、業界でいち早くデジタル化に取り組み、2010年に『日経電子版』を発行するなど、デジタル領域にも力を入れてきました」(首藤さん)
現在、「日経電子版」をはじめとするデジタル有料購読数は87万(2021年5月時点)で、世界有数のデジタルニュースメディアに成長しました。
「メディアの形は変わっても、お客様に正確で質の高いコンテンツを届けていきたいという思いは変わりません。今後、デジタル領域の勢いを加速させるためには、コンテンツの作り方、販売の仕方など、根幹のビジネスモデルを新しく考え直す必要があります。例えば、読者が求めている時間帯に重要なニュースや解説を紙面に先駆けて電子版で配信するという試みも始めています。一方で、事業としての取り組みとは別に日経という会社を見た時は、人材配置や人材登用、人材育成など人事戦略全体に渡って従来型の意識が色濃く残っていると感じていました」(首藤さん)
H R本部では、新たなビジネスに対応できる人材を育成していきたいと考え、年功色の強い人事制度を見直して能力のある人材が活躍できるようにと職能資格制度や役割等級制度などを取り入れてきました。しかし人事制度だけで社員の意識を大きく変えることは難しく、年功的な意識は大きくは変えらなかった、と言います。
データ重視の人材活用へシフトするため、Workdayを導入
そんな折、同社では、全社を挙げてDXを推進する機運が高まっていました。それにあわせてHR本部では組織のあり方や組織ごとのミッションも改めて見直すなど、人事戦略としても大きな意識改革のチャンスだと感じていました。
同社では、2021年4月から管理職にジョブ型人事制度を適用し、さらに、高度な人材分析や人材育成を目的とする人材プラットフォーム「Workday Human Capital Management(以下、Workday)」を導入しました。数ある人材プラットフォームの中でもWorkdayを選んだ理由を首藤さんは次のように語ります。
「これまでバラバラに管理していた採用、研修、評価、処遇など人材に関連する様々な情報をシームレスなシステムに取り込んで一元管理し可視化することで、それぞれの人材情報を連携させて活用できるような戦略的な人事サイクルを構築します。人材情報を 『データ』として蓄積し、人事施策の様々な場面で活用することで、データに基づいた客観的な人事戦略を実現し、年功的な考え方から完全に脱却したいと考えました」
Udemy for Businessを導入し、社員の主体的な学びを支えたい
同社では、研修制度も大幅に見直すことにしました。これまでは、入社半年・5年目などに若手が受講するフォローアップ研修と、階層別研修などの集合研修が中心でしたが、今後は、それぞれの職務に応じて、主体的に学ぶ意欲を伸ばしていくための研修制度にしたいと考えました。そこで、同社では2021年4月からWorkdayに加えて、Udemy Businessを導入したのです。
「Udemy Businessは、社内でのDXを加速させるにあたり、講座の質、量ともに適しており、豊富な講座の中から今後の自分に必要なコンテンツを自由に選択できるのがよいと考えました。日経電子版を始めデジタル事業をさらに進化させ、時代に合ったメディアにしていかなければなりません。講座を活用して、最新トレンドを学び、ビジネスに生かしてほしいです」(首藤さん)
また、Workdayとの親和性が高いことが導入の決め手になったそうです。
「業務スキルなどのより定性的なデータに基づいて優秀な人材を計画的に育成できる環境を整えたいと考えました。これまで我が社のタレントマネジメントは、実績や経験に基づく部分が多く、データに基づいた分析的な観点が十分でなかったと感じています。そこで、WorkdayとUdemy Businessを連動させることで、社員や職場が必要としているスキルを可視化し、ニーズにあった研修をすぐに提供できるような環境を作り、分析的でスピード感のある人材育成を行いたいと考えています。HRインフラや研修のあり方を変えることで、そうした分析的な手法を我が社のカルチャーとしていきたいです」(首藤さん)
WorkdayやUdemy Businessを導入し、意欲のある社員が主体的に学べる環境を設ける背景には、若い世代に会社が変わっていることを示したいという思いも強いと首藤さんは語ります。
「10年、20年後の我が社を支えるのは現在の若手社員です。彼らが主体的に学び、のびのびと働ける風土を作りたいと考えています。人事制度や研修制度を整え、多様な人材が自律的に成長し長く活躍できる会社にしたいと思います」
戦略的人事サイクルの構築を目指して
今年4月からUdemy Businessの希望者を募ったところ、 社員の半数を上回る1600人超の 受講希望者が集まりました。活用にあたっては、ベネッセコーポレーションによる情報提供を受け、HR本部主導で社内研修なども実施していく予定だとHR本部人事部の田邊友子さんは語ります。
「豊富なメニューから自分に合った講座を選べるよう、職種ごとに受講推奨講座を作成して提供しています。今後、更にデジタルマーケティング分野の講座が充実することを期待しています」
現在は、Udemy Businessの利用は社員のみだが、新卒採用への導入も考えていると言います。
「以前、新卒採用に携わっていたのですが、近年の学生さんは入社前から研修制度への関心が高いと感じています。そこで、Udemy Businessを内定者研修などにも活用していきたいです」(田邊さん)
最後に首藤さんに同社の人材育成の展望についてうかがいました。 「Workdayを通してデータを集め、採用や人事配置、研修育成、評価などの戦略的な人事サイクルを連携させて一体運用するという大きなデザインは見えてきました (図1) 。しかし、ジョブ型人事制度やWorkday、Udemy Business の運用はまだ始まったばかりです。どういうデータを集め、どう活用するのか、など中身の部分についてはまだまだ考えなければいけないことが沢山あります。社員の意見も聞きながら、一緒にこのシステムを作っていきたいと思います。Udemy Businessの研修のように、『社員も参加する』システムにしていきたいですね」(首藤さん)