Udemy Businessを活用したグループ学習で、社員のエンゲージメントが大幅に向上
アズビル株式会社
1906年に創業のアズビル株式会社は、計測と制御の技術を追求する総合オートメーションメーカーです。成長事業領域の拡大を加速するため、2021年からDX人材の育成を強化しています。今回は、グループクラウド開発部とアズビル・アカデミーの皆さまに同社のDX戦略とUdemy Business導入の背景について、グループ財務部の皆さまにUdemy Businessを活用したチーム学習によって社員のエンゲージメントを高めた取り組みについてお話をうかがいました。
INDEX
DX人材を育成し、3つの成長事業領域の拡大を目指す
総合オートメーションメーカーのアズビルは、オートメーション技術を共通基盤とした
3つの成長事業領域 ―「新オートメーション事業」「環境・エネルギー事業」「ライフサイクル型事業」を定めビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の各事業において最新のデジタル技術を活用した商品開発・各種サービスの展開を加速させることにしました(図1)。
グループクラウド開発部の鈴木丈樹さんは、当時の事業課題を次のように話します。
「それまでも各部署でデジタル化に関する取り組みを進めていましたが、全社的なものではありませんでした。例えば、社内の課題解決を行うにしても、IT化が必要なのか、DXが必要なのかも曖昧でした。そこで、2022年に弊社におけるDXを定義し、『中期経営計画(2021〜2024年度)』や統合報告書にDX戦略を盛り込み、全社を挙げてDX推進を加速したいと考えました(図2)」
同社では、DX推進を加速させるにあたり、DX調査を行い、まずは課題を把握しました。そこで浮かび上がってきたのは、DX教育の必要性です。DX活動の企画・変革の推進者だけでなく、変革の中核となる人材や、企画を理解して実行する人材が必要だと考え、DX人材を「リーダー」「専門家」「リテラシー」の3層に分類(図3)。各層の目標人数を設定し、DX人材育成をスタートしました。
Udemy Businessを活用し、「専門家層」を育成
DX人材を育成するため、まずは、DXとは何か?やイノベーションとは何か?を学ぶ”AWSイノベーションセミナー”を開催するなど、社内外の研修やセミナーを用意しました。
加えて、社員が自律的に学べる環境を用意することが必要だと考えました。そんな折、鈴木さんは、大手金融機関が自己研鑽の学習ツールとして、Udemy Businessを利用しているという雑誌記事を読み、2022年12月、社内でUdemy Businessのトライアルを決めました。
トライアルメンバーの1人であり、DX教育にも関わるグループクラウド開発部の野間節さんは、当時の状況を次のように説明します。
「各部署の主要メンバー30人が、Udemy BusinessのDXに関する様々な講座を受講し、内容や操作性などを採点しました。その結果、メンバーの利用満足度は非常に高く、弊社の人材育成の専門機関であるアズビル・アカデミーと連携し、2023年7月からDX人材育成の教育メニューの1つとして導入することにしました」
アズビル・アカデミーキャリア・サポートグループの藤方美智さんは、次のように話します。
「トライアルで評価が高かった講座だけではなく、弊社のDX推進に必要な分野がまんべんなく入るように11講座(計30時間)を選びました。そして、それらの講座と受講前後に受講者アンケートを組み込んだ指定ラーニングパスを作成しました。導入初年度の受講者は、各部署の上長から推薦を受けた各部門のDX施策を進める上で、DXをより理解し推進していく役割を担っていただく社員603名です。経営陣に業務時間中のUdemy Businessの受講を承認してもらい、確実に学びの時間を確保できるようにしました」
多様な教育メニューをそろえ、教育弱者を減らしたい
同社では、Udemy Businessの活用を促進するために、Zoomを用いたオンラインミーティングとMicrosoft Teamsを用いたコミュニティ活動(図4)を実施しました。いずれも参加は希望制です。特に活発に活動しているのが、Zoomでのオンラインミーティングです。これは、有志の学習者が集って情報交換を行う場となっています。2023年度は8回実施、2024年度は四半期に1回実施予定です。Udemy Businessのヘビーユーザーの活用報告など、受講者の生の声を共有することで学習意欲を喚起することを狙いとしています。
受講者からは「知らない分野を学ぶときに、概要をつかむのに役立った」「指定講座以外にも自由に受講できたため、立ち読み感覚で様々な講座を視聴できたのがよかった」といった声が届いているそうです。
中でも野間さんが印象に残ったのは、Udemy Businessで年間300時間以上学んでいた社員の声でした。
「その社員はサービス系の部門から開発系の部署に異動した方で、業務に必要な生成AIに関する知識などをUdemy Businessで学んでいました。これまでは開発系の研修を受ける機会が少なかったそうで、『わからないことがあれば、動画を見ながら手を動かして学べるため非常に便利だった』と話していました。社内にはその社員のように学びたいけども学習の機会が少ない教育弱者がいるのだと実感し、改めて自律的な学びの機会を設けるこの重要性を認識しました」
2023年は、Udemy Businessの受講は選抜制でしたが、受講者の満足度が高かったことから、2024年度はDX人材育成に限らず自己研鑽のための学習ツールとしての利用を見込み、全社員から受講希望者を募ることにしました。すると、募集開始から1時間で定員枠が埋まりました。アズビル・アカデミー学長の荻野明子さんは、今年度2024年度のUdemy Business利用について次のように説明します。
「弊社は、『学習する企業体』を教育方針に掲げており、階層別研修や全社研修など、様々な学びの機会を提供しています。また、社員自らが学ぶことも積極的に支援していきます。豊富な学習コンテンツを揃えているUdemy Businessを始めとするeラーニングサービスの活用は、支援実現のための有力な手段のひとつです。社員の皆さんが公平に学ぶことができる環境を整えたいと考えています。2024年度は、タスクチームを立ち上げ、社員の自己学習を支援するための環境整備について検討します。社内ニーズの調査結果をふまえ新たな施策の提案・実現につなげていきます。
若手をリーダーにチーム学習を行い、部内のDXを推進
2023年度には、部署全員がUdemy Businessを利用し、DX教育を実施した部署がありました。その1つがグループ財務部です。グループ経営管理本部グループ財務部管理グループグループマネージャーの潮田尚史さんは次のように話します。
「我々の組織のパーパスは、『組織の活動に貢献するサポーター兼コーチとして機能する』です。戦略の1つとして『Microsoft 365を中心としたITツールを徹底的に活用したDX推進』を掲げました。グループ全員でDXに取り組む必要があると考え、アズビル・アカデミーに相談して、部署全員でUdemy Businessを受講させてもらうことにしました」
潮田さんは、Udemy Businessの学習をチームで進めることにしました。その狙いは、若手からシニアまで、幅広い年齢層の社員が所属する部内のコミュニケーションの活性化を図ることでした。また、従業員満足度調査から、部内メンバーの成長機会が少ないことが課題として上がっており、Udemy Businessによって学びの場を提供することで課題解決を図りたいと考えました。
グループ財務部では、社員12名を4名ずつの3チームに分けて学習を実施。リーダーには若手3人を抜擢し、学習方法はチームに任せました。リーダーの1人、アズビルトレーディング株式会社 財務部(2023年度は、潮田さんと同じグループ財務部に所属。2024年度から現職に出向中)の栗川瑞央さんは、チーム学習を次のように説明します。
私たちのチームは毎週1時間、チーム学習時間を設けました。最初の45分間は全員でUdemy Businessの指定講座を視聴、残り15分間でその内容について議論しました。2023年度は、アカデミーが指定したラーニングパスの講座を受講し、2024年度は、Microsoft 365を中心とした講座から視聴しています」
開発初心者が業務改善のアプリを作成。社員のエンゲージメントも向上
栗川さんは、チーム学習のメリットは、コミュニケーションの活性化と学びの習慣化だと話します。
「グループ財務部には財務に関わる様々な業務があり、誰がどのような業務を担当しているか把握しきれていませんでした。今回チーム学習に取り組むことで、部内のコミュニケーションが活性化し、お互いの担当業務や強みをよくつかむことができました。また、Udemy Businessは動画で気軽に学べるため、学びへの抵抗感がなくなり、メンバーからは『学習の習慣付けができた』」といった意見が上がりました」
栗川さんは、Udemy Businessを利用したチーム学習を通して、Microsoft 365の各種ツールを用いて業務改善に関わるアプリケーション開発しました。
「グループ財務部では、マネージャーや部長などに承認を得る作業が頻繁にありますが、メールやチャットなど、承認経路が統一されておらず、課題に感じていました。それを改善するため、Microsoft Power AutomateやPowerApps、SharePointを活用して『承認照査アプリ』を作成しました。これまでアプリ開発の経験はありませんでしたが、Udemy Businessで学び、チームの仲間に助けてもらい、完成にこぎつけました」(栗川さん)
今回のグループ財務部のチーム学習は、業務改善に寄与しただけでなく、部内のエンゲージメントにも大きな影響をもたらしました。2023年度、全社で実施している従業員満足度調査において、グループ財務部の「働きがい」「成長機会」「チームワーク」「職場活力」「組織パフォーマンス」の項目が、前年度と比較して大幅に上昇し、全社平均と比較しても+10%以上となる良好な結果となりました。
「課題に感じていたメンバーの『成長機会』が改善し、非常にうれしく思います。チーム学習を通じて、リーダーを務めた若手のファシリテーション力が上がったり、隔週で行う1on1では、部下から業務改善につながる提案が増えたりするなど、私自身もメンバーの成長を実感しています」(潮田さん)
潮田さんが2024年度の目標にとして掲げるのは、アウトプットを意識した活動です。
「次の3つを今年度の重点テーマとしています。1つ目は、Excelのデータ処理であるPower Query、Power Pivotなどの学習を進め、さらにデータ処理の効率化を図ることです。2つ目は、Power AutomateやSharePointなどのツールを用いて、業務の自動化に挑戦することしたいです。そして、3つ目は、業務で活用できる生成AIについて学びを深めることであり、それぞれ力を入れ、部内のDXをさらに加速させていきたいと思います」(潮田さん)