LMSとUdemy Businessを連動させて、18の人材類型別の研修に活用
パナソニック
インフォメーションシステムズ株式会社
パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社は、パナソニックグループのIT戦略を支援する企業です。同社は、事業戦略に沿った人材育成を進めるため、社員のスキルの可視化を目的として18の人材類型を設定し、LMS(学習管理システム)を導入しました。そして、社員が目指す人材類型に近づくための研修教材の1つとして、Udemy Businessを採用しました。今回は、人事総務部採用・人材育成チームの皆さまに、人材類型の設定やLMSの導入背景、Udemy Businessの活用状況についてうかがいました。
INDEX
情報システム部門の人材要件を18の類型に分類
パナソニック インフォメーションシステムズは、パナソニックグループの商品の設計や製造、物流、販売などの業務システムに加え、IT基盤やIoT、ビッグデータ、クラウド、AI活用など、幅広いITソリューションを手掛ける企業です。
パナソニックグループでは、2022年4月、IT人材を育成するために、情報システム部門の人材類型を18に分類し、それぞれ5段階のレベルを設定。各類型・レベルに求められる知識・スキルを整理しました
人事総務部採用・人材育成チーム、チームリーダーの野間大樹さんは、人材類型を設定した背景を次のように語ります。
「パナソニックグループは、情報システムに関わる社員のスキルを可視化し、類型ごとの過不足を把握することが、戦略的なIT人材の育成に不可欠であると考え、人材類型をグループ全体で導入しました」
さらに同社は、この人材類型を社員の自己成長の指標として活用しようと、2023年4月、18の類型・5段階のレベルごとに必要な知識・スキルを身につけるための研修を「人材類型別研修」として、自社の研修体系に盛り込みました。(図1)。
自分のレベルを上げたり、他の人材類型にキャリアチェンジ(リスキリング)したりするために必要な要件が可視化されることで、社員が目標に向けて自己研鑽しやすくなると考えました。
「例えば、アプリエンジニアのレベル1からレベル2に上がるため、何を勉強しなければならないのかが明確化されたことで、目標に向けた学習に自ら取り組むことを期待しました」(野間さん)
同社では、毎年4月に全社員が上司と面談し、現在の類型とレベルを確認し、その年にどの人材類型・レベルを目指すか目標を設定します。その後、研修体系に基づいて必要な研修を受講し、スキルアップを図ります。年度末には再度面談を行い、1年間の成果を振り返ります。
人材類型別研修の教材としてUdemy Businessを活用
同社は、2023年4月、人材類型別研修の教材の1つとしてUdemy Businessを採用しました。そして、18の人材類型に対して、基礎(レベル1・2相当)・標準(レベル3相当)・高度(レベル4・5)の3つのレベルごとに、受講を推奨するUdemy Businessの講座とパナソニックグループが提供するeラーニング研修をマッピングしたラーニングパスを示しました。
さらに、社員の自律的な学びを促進し、学習履歴を可視化するため、LMSも導入しました。人事総務部 採用・人材育成チームの山添信也さんは、LMSを導入した意図をこう述べます。
「上司や人事が社員の学習状況を把握することに加え、LMSによって学びの導線を整えて社員が学びやすい環境を整備しました。具体的には、LMS上に社員一人ひとりに合った必修研修と人材類型別研修が表示され、研修名をクリックするとすぐに自分に合ったUdemy Businessやeラーニングの講座画面が開く仕組みです(図2)」
LMSでは、自分が属する人材類型のレベルに応じた研修に加えて、1つ上のレベルのラーニングパスも表示されます。
「階層別研修は年次に応じて受講が必須ですが、人材類型別研修の受講は任意です。次のレベルの研修を先取りしたり、別の類型の研修を受講したりすることも可能です。意欲的な社員がさらに成長できる環境を整えられました」(山添さん)
また、Udemy Businessは、語学やビジネススキル、資格取得の学習にも活用されています。
「特に若手社員は、日常の業務に役立つロジカルシンキングや資料作成などのビジネススキルの講座を多く受講しています。AWSなどの資格取得のために活用している社員も増えています。Udemy Businessは、ITスキルだけでなく幅広い講座を提供しているので、社員に多様な学びの機会を提供できました」(野間さん)
多様な手段でUdemy Businessの利用を促進
現在、社員の8割がUdemy Businessを登録しています。登録率を上げるために効果的だった施策は2つ挙げられます。
1つ目は、Udemy Business登録手続きの簡略化です。人事総務部採用・人材育成チームでUdemy Business利用促進を担当する井上雄斗さんは次のように説明します。
「以前は、登録手続きの申請は、社内ポータルサイトの人材育成ページを閲覧し、そこに記載されたメールアドレスに必要事項を記載しメールを送信する必要がありました。そこで、MicrosoftFormsで申し込みフォームを作成し、簡単に登録手続きの申請ができることを社内ポータルサイトやSNS、説明会などで案内したところ、申請数が急増しました」
2つ目は、様々な手段でUdemy Businessの登録と利用促進を図ったことです。社内ポータルサイトや社内SNSを活用して、多様な情報発信を実施しました。例えば、社内ポータルサイトには、ラーニングパスの紹介や分野別の受講講座数ランキング、個人別総学習時間ランキング、新着講座紹介、利用者の声などを定期的に発信しています。
「昨年度は、Udemy Businessの利用実績の多い社員3人に、受講時間やUdemy Businessを受講して業務に役立ったことなどを聞き、その結果をまとめて発信しました(図3)。3人に共通していたのは、私用の端末にUdemy Businessのアプリをダウンロードして、通勤時間や始業前などの隙間時間に学習していたことです。そうした使い方を他の社員にも知ってもらおうと、各事業部の責任者が集まる会議で、私用端末におけるUdemy Businessに使い方を紹介しました」(井上さん)
2022年度は、社内のポータルサイトやSNSを中心に情報を発信していましたが、2023年度から 4半期に1度、DMを送付する取り組みも開始しました。井上さんは、社員を「Udemy Business利用登録済み」「Udemy Business登録済みだが未受講」「Udemy Business未登録」の3つに分け、それぞれに適したメールの文面を作成するなど、受講につながる工夫をしています。
「DM送付後の登録者や利用者の増加数を分析したところ、発信時期や内容を工夫することで、登録者数や利用者数が大幅に増えることがわかりました。例えば、『未登録』の社員に、『夏休みにUdemy Businessで勉強を始めましょう』とDMを送付したところ、登録者が大幅に増えました」(井上さん)
井上さんらの登録促進活動により、Udemy Businessの活用は拡大しています。
「ある部署の責任者から、『部署の担当者に受講してほしいUdemy Businessの講座を選んでラーニングパスを作り、LMSで案内したい』という相談がありました。LMSやUdemy Businessが社内で有効に活用され始めているからこそ、そのような相談があったのだと思います。社内に自律的な学びが広がっていることを実感でき、とてもうれしかったです。各部署の研修にLMSやUdemy Businessをもっと活用してもらえるよう情報発信していきます」(野間さん)
山添さんは、キャリアアップだけでなく、実務に活用できることを強調することで、Udemy Businessの受講時間をさらに増やしていきたいと述べます。
「業務で直面した課題をUdemy Businessの講座を視聴することで解消できたという事例など、人材類型別研修が実務に生かせることをさらにアピールしたいと考えています」
人材類型別研修による社員の成長を検証
今後、採用・人材育成チームは、人材類型別研修やLMS、Udemy Businessの導入が、社員のキャリアアップやキャリアチェンジに与えた影響を検証する予定です。
「弊社は人材育成のキーワードとして『早期プロフェッショナル化』を掲げており、入社5年目までに半数以上の社員がレベル3に到達することをKGI(重要目標達成指標)に設定しています。人材類型別研修は導入して間もなく、収集できるデータはあっても比較できるデータがありませんでしたが、人材類型別研修設定し2年目が経過する今、過去1年間でレベルアップした社員の数など、定量データを収集して分析していきます」(野間さん)
定量データによる社員の成長は検証段階にありますが、社内に学習文化が醸成されつつあることは、従業員満足度調査から明らかになっています。同社は従業員満足度を年1回実施しており、その中に「当社には私が学習し、成長できる機会がある」という項目があります。人材類型別研修を実施した2023年から、その肯定率は上がってきています。野間さんは、次のように今後の展望を述べます。
「人材類型というスキームに、Udemy Businessを導入して2年が経過ました。従業員満足度調査にも現れているとおり、自己啓発ができる環境は整い、LMSやUdemy Businessの利用価値も高まったと感じています。今後もそれらの活用方法をさらに追求し、社員一人ひとりのスキルアップをサポートしながら、企業としての成長に結びつけていきたいと考えています」