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全社員対象の「Mitsui DX Academy」で実現する“DX総合戦略”

三井物産株式会社

三井物産株式会社

三井物産株式会社

三井物産株式会社では、2019年10月、デジタル総合戦略部を設立、2020年4月に同部署に社内のシステム主管を集約し新体制を発足、2021年5月に同部署を中心としてDX総合戦略を推進する人材を育成するため「Mitsui DX Academy」と題した社内研修を始めました。社内の研修とUdemy Businessを組み合わせ、ビジネスとデジタルの双方に精通した人材を育成する方針です。デジタル総合戦略部DX人材開発室長の奥村明也さん、デジタル総合戦略部DX人材開発室兼デジタルテクノロジー戦略室マネージャーの松本悠揮さんにその狙いと具体的な施策についてお聞きしました。

DX事業戦略を掲げ、新たなビジネスモデルの創出を目指す

三井物産株式会社は長い歴史を通じて「人材主義」「自由闊達」「挑戦と創造」といった価値観や理念を掲げ、社会で活躍する人材の育成に努めてきました。そうした企業文化からいつしか「人の三井」と称されるようになりました。2020年に発表した中期経営計画においても、重点を置く経営戦略の1つに、「グローバルで多様なプロ人材の育成」を掲げ、「社員の自律的な成長の促進」、「適材適所の人材配置」の重要性が示されています。

加えて、同社では2019年10月、デジタル総合戦略部を設置し、DX人材の育成にも注力していくことを発表しました。デジタル総合戦略部DX人材開発室長の奥村明也さんは、その背景を次のように話します。

「当社は2017年5月、総合商社としては初めてCDO(Chief Digital Officer)を設置し、いち早くDXに取り組んできました。事業本部においては攻めのDXを、コーポレート(管理部門)では守りのDXを進めてきましたが、業務の効率化を図りながらも創造的な取り組みを強化するため、DXを推進する組織と社内システムを管理する組織を統合しデジタル総合戦略部を設立したのです」

デジタル総合戦略部DX人材開発室長 奥村明也さん
デジタル総合戦略部DX人材開発室長 奥村明也さん

デジタル総合戦略部では、2020年7月に策定したDX総合戦略を基に、3つの戦略が進められています。1つめは、DX事業戦略です。各事業現場の保有するオペレーションテクノロジーにデジタルの力を掛け合わせ、新たな価値を生み出すことで、既存事業の収益力強化や新事業の創出を目指します。2つめは、DD(Data Driven)経営戦略です。内部データを徹底的に活用することで、迅速かつ正確な意思決定を行い、事業経営の強化を図ります。そして、3つめは、それらの戦略を支えるDX人材戦略です。この3つの戦略の策定にかかわったのが、デジタル総合戦略部DX人材開発室兼デジタルテクノロジー戦略室マネージャーの松本悠揮さんです。松本さんは、同社のD Xと人材育成のつながりを次のように説明します。

「DX事業戦略を進めるにあたり、6つの攻め筋を掲げており、従来のソリューションを活かした徹底的な効率化を目指す短期的な取り組みから、中長期的には次世代に向けて改革を行い、新たな事業への挑戦することを掲げています。後者では、例えば、スマートシティや次世代モビリティなど社会インフラを整えるような大型DXや、AIによるがん診断など新技術活用するDXなどをイメージしています。そうした戦略を実現するには人材戦略が最も重要だろうと考えていました」

ビジネスとデジタルの双方を深く理解するDXビジネス人材を育成

DX総合戦略を進める人材を育てるため、同社ではDX人材タイプを3つに分類し、それぞれの成長を目指すことにしました。

三井物産 DX人材の3タイプ(同社資料をもとに作成)
三井物産 DX人材の3タイプ(同社資料をもとに作成)

図中aの「ビジネス人材」は、各事業本部やコーポレート部門における知識・スキル・経験を身につけている人材で、同社で最も多い人材タイプです。一方cは、ハイレベルなDX技術を身につけた「DX技術人材」です。グループ会社での育成を進めるほか、社内でも一定数の育成を目指しているそうです。そして、同社が最も注力して育成したいと考えているのが、bの「DXビジネス人材」だと松本さんは強調します。

「CDOを設置し、3年間、業界に先駆け様々なDXを展開してきました。振り返ってみると、『ビジネス人材』と『DX技術人材』の間に大きなギャップがあるという課題が浮き彫りになりました。もっとも目にするギャップは、DX技術人材が話している専門用語を、ビジネス人材が十分に理解できないといったことです。また、それだけではなく、例えば、あるシステムの精度を90%か85%のどちらかにすべきか、という比較検討をする際、データを取得する負担や解析するマンパワーを考えて85%の精度と判断するなどビジネスとDX技術、双方の視点が求められる場面も増えていました。そうしたギャップを克服するため、『ビジネス人材』を『D Xビジネス人材』へと近づける研修体制を構築したのです。また、すでにbやcにあたる人材の専門性も伸ばす研修も用意したいと考えました」

デジタル総合戦略部DX人材開発室 松本悠揮さん
デジタル総合戦略部DX人材開発室 松本悠揮さん

全社員向けのDX教育としてMitsui DX Academyを開講

タイプ別のDX人材をそれぞれ伸ばしていくために、全社員向けのDX研修として「Mitsui DX Academy」を開講。DXスキル研修、ブートキャンプ、海外留学の3つの施策を用意しました。また、DX人材の認定を行い、認定された人材は海外大学留学への応募や全社DX案件への適材適所を可能にすることで社員のDXへのモチベーション向上もねらいました。

Mitsui DX Academy 3つの施策(同社資料をもとに作成)
Mitsui DX Academy 3つの施策(同社資料をもとに作成)

DXスキル研修は4つのステップで構成されています。STEP1の基礎Ⅰは「DX for everyone」という自社で制作した4時間のオンデマンド講座を視聴するというものです。全社員の受講を必須とし、2021年5月から8月までに約4600人が既に視聴しました。

「DXの考え方から、当社のビジネスにおいてどのようにDXツールを活用していくべきかまで、概論的に学べる内容です。DXに直接関連のない部署の社員でも、デザイン思考やAIを学ぶきっかけになればと考えました」(松本さん)

Mitsui DX Academy DXスキル研修の全体像(同社資料をもとに作成)

STEP2の基礎Ⅱは、DXの教養獲得を目指し、Udemy Businessの講座受講を研修に組み込み、全社員に受講を推奨しています。デジタル総合戦略部がセレクトした約40のUdemy Business講座から、一定時間視聴すれば、“a+”人材に自動認定されます。

「基本的には自由に視聴可能ですが、中にはどれを受講すればよいか迷う社員もいると考え、いくつかの推奨コースを用意しています。例えば、汎用コースには、データ分析の基礎やBIツールの講座を組み込んでいます。これまで会議では大量の文書データをまとめた報告書を使用していましたが、意志決定の効率化を図るため、数値をグラフなどの見やすい形に変換してダッシュボード上に表示するPower BIの活用が今後の会議には不可欠だと考えています」(松本さん)

STEP3は、DXにおける専門性を身につけられるよう、応用Ⅰと位置づけUdemy Businessの中からDXに関わる中・上級向けの内容を約60講座選定。bの「D Xビジネス人材」の認定には、応用Ⅰの講座から30時間以上の視聴と、2つ以上のDX案件の実施が課せられています。取り組みをはじめて約1年ですが、入社3年目の若手から30年目のベテランまで、16人が「D Xビジネス人材」に認定されているそうです。更にその先にSTEP4の応用Ⅱも用意し、高度専門性の獲得も目指しています。

DXスキル研修にUdemy Businessを組み込んだ理由を松本さんは次のように述べます。

「これまでもDXに関わる社内研修や説明会を実施していましたが、社員が実際に手を動かしながら受講する研修ではなかったため、十分に知識やスキルが身についていないという課題認識もありました。そこで、今回、DXスキル研修向けにセレクトしたUdemy Business講座は、自分でデータ解析を行うなど実践的な内容を中心に選んでいます。」

学習コンテンツとしてUdemyを選んだ理由については、

「自律的な学びを広げていきたいと考え、国内外のDX研修ベンダー、約50社のサービスを徹底的に調べました。Udemy Businessを導入した理由は4つあります。1つめは、国内だけでなく海外の現地社員も使えるプラットフォームであることです。今後3年間でグローバルで「DXビジネス人材」を100人育成したいと考えており、多言語展開しているUdemy Businessが当社に合っていると感じました。2つめは、講座の質と量が充実していることです。AI関連の講座が充実している eラーニングはほかにもありましたが、DXを推進するためには、デザイン思考といった思考法に加え、AIや統計解析といった技術、BIやRPAなどのツール活用、様々な視点から学ぶことが必要だと考えています。そうした内容をレベル別に学べる講座を探していました。また、DXというのは日進月歩で、私たちが学んでいる知識もすぐに陳腐化しています。Udemy Businessでは、講座の入れ替えが随時行われ、質を担保する仕組みがあるのもよいと感じました。3つめは、事務局が受講管理をしやすいことです。4つめは、運用実績です。日本においても多くのグローバル企業が既に導入していることも安心材料でした」

社員同士で刺激を与えあい自律的に学ぶ風土をつくる

上記の導入理由やDX Academyの趣旨に関するCDOとの対談を社内報で発信するなど、インナーコミュニケーションにも努めてきた松本さん。現在では、DXスキル研修のほかにも、実際にDXプロジェクトに入り、1年半、実践を通じたプロ養成を行うブートキャンプや最先端のDXスキルを獲得するために海外大学への短期・長期留学を行うExecutive Educationといった施策も実施し、どのタイプの人材も成長させる体制を整えています。

今後、DX人材育成を進める上での課題をお二人にお聞きしました。

「部下が自律的に学ぶ様子を見て、DXについて学び始めたベテラン社員も多いです。しかし、未だに、DXは若い社員が学ぶものだと考え、リスキリング教育や学び直しに抵抗感を持つ社員も少なくありません。DXについてベネラン社員も十分理解しなければ、部下の評価や適性に合った配属につながらないと考えています。いかにベテラン社員の思考を変えていくか、その手立てを考えていきたいです」(奥村さん)

松本さんは、DXビジネス人材の成長も重要だと考えています。

「DXビジネス人材に期待するのは、さらなる自律的な学習と、DXプロジェクトをともに遂行する人材=フォロワーを周囲に増やしていくことです。社内のDXを推進するために、周囲の社員にも『自分はこのような勉強して、こうしたビジネスに活用している』といった体験談を広げ、『自分もDXについて勉強したい』という社員を増やしてほしいと考えています。そうした仕組みをデジタル総合戦略部でも構築できないかと、ブートキャンプを卒業した社員同士の交流イベント開催やDXスキル研修の感想を書き込める社内チャット開設などを予定しています。社員が学びあう風土をさらに醸成していきたいです」(松本さん)

三井物産株式会社
企業名
三井物産株式会社
業種
総合商社
従業員数
5,587名(2021年3月31日現在)

金属資源、エネルギー、プロジェクト、モビリティ、化学品、鉄鋼製品、食料、流通事業、ウェルネス事業、ICT事業、コーポレートディベロップメントの各分野において、全世界に広がる営業拠点とネットワーク、情報力などを活かし、多種多様な商品販売とそれを支えるロジスティクス、ファイナンス、さらには国際的なプロジェクト案件の構築など、各種事業を多角的に展開。

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