ゴールを明確にした全社横断の技術研修を実施し、ITエンジニアのリスキリングを支援
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、2021年11月にITエンジニアのキャリアアップ支援を行う組織として、「リスキリングセンター」を設置しました。同センターでは、今後の成長事業を牽引するITエンジニアを育成するための研修を実施しており、その一部にUdemy Businessを活用しています。同センター設置の経緯とUdemy Business活用について、技術人事本部リスキリングセンター長の小枝創さんと、リスキリングセンターの発案者であり、技術顧問を務めるAI事業本部事業責任者の木村衆平さんにうかがいました。
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全社横断で技術領域の人材育成を戦略的に進めるリスキリングセンターを設立
株式会社サイバーエージェントでは、最新の技術トレンドに対応したITエンジニアの学びを推進し、キャリアアップを支援するための組織として、「リスキリングセンター」を2021年11月に設置しました。その背景には、IT技術の革新が早く、技術トレンドの移り変わりが年々激しくなっていることが関係していると、リスキリングセンターの発案者であり、技術顧問を務める木村衆平さんは話します。
「当社で展開する各種サービスにおいて、今までにない新しい体験の提供や、より効率的な事業開発を実現すべく、エンジニアはスキルのアップデートや最新技術のキャッチアップをする頻度を加速させる必要があると考えました。一方で、事業規模が年々大きくなり、日々の業務に追われ、社員一人ひとりの知識・技能の向上が鈍くなっていた部分も否めませんでした。そこで、スピード感を落とさず、機動力を上げてサービス開発を行うため、本センターが最新技術や高度専門知識を学ぶ機会を提供し、エンジニアのキャリアアップを支援したいと考えました」
同社では、会社設立当初から、各開発チームが裁量権を持ち、事業を進めるという自由闊達なカルチャーがあり、事業部ごとに必要な研修を実施してエンジニアを育成していました。そうした中、同センターの設置によって、技術領域の人材育成を全社横断で戦略的に進めることになります。全社横断にこだわった理由は、人材育成において次のような課題があったからだと、木村さんは語ります。
「大型の設備投資が必要ないインターネット産業では、人材が大きな競争力であり、経営資源です。そのため、これまでも当社は、人材育成に力を入れてきました。新卒社員向けには、全職種横断の全体研修を行った後、職種ごとに研修を実施。配属後は、OJTを軸としながら、事業部ごとに必要な知識を学べる体制を整えています。また、エンジニア向けには、技術力や知見の向上を目指したゼミや、有志による勉強会などが頻繁に実施されています。ただ、それらの技術に関する研修の多くは、事業部ごとの課題解決に対応した単発の研修となっていました。そこで、会社全体として数年先の事業成長を見据え、技術領域の人材育成のフレームを整え、戦略的に研修を実施しようと考えました」
経営陣や事業部と情報共有を行い、育成したい人材を明確化
技術領域の人材育成のフレームづくりを担うのが、エンジニアの人事業務を担当する技術人事本部と、リスキリングセンターとなります。小枝さんは、同センター長として、全社横断の研修の企画・運営・推進を統括しています。
「リスキリングセンターでは、最新技術や高度専門知識を効率的に身につける機会を提供することで、ビジネス戦略に則した人材を戦略的に育成していきます。加えて、各事業部が実施する研修の中で、全社的に必要だと思う研修は、部署に関係なく参加できるようにする予定です。例えば全社員にAI教育を施すことで、自部署内のデータサイエンティストとのコミュニケーションコストを下げたり、簡単な分析なら専門家に頼らず自ら行えるようになるような仕組みを整えています」
また、現状の技術者育成における課題を解消するための取り組みも行う予定です。
「例えば、各事業部でバックエンドエンジニアが不足しているので中途採用を強化していますが、バックエンドエンジニアの負荷を減らすため、フロントエンドエンジニアがバックエンド技術を学ぶ場を設けようと考えています」(小枝さん)
そうした人材育成戦略を練るため、技術人事本部と各事業部の人事担当者が綿密に情報を共有しています。加えて、各事業の技術領域の人材育成に関する方向性を確認し、同センターによる研修の必要性を理解してもらうため、CTO(Chief Technical Office)統括室のメンバーと各事業部のリーダーが集う定期的な戦略会議に、リスキリングセンターも参加しています。
新部署で働くメンバー育成など明確なゴール設定を行った研修を実施
リスキリングセンターでは、最新の技術トレンドに対応した各種研修が行われています。これまでに「データサイエンス/機械学習講座」「データアナリスト講座」「MLエンジニア講座」「バックエンドエンジニア講座」の研修が行われています。
研修は公募形式のものが多く、前提知識さえあればエンジニア職でなくても参加できます。他にも事業部リーダーからの推薦者を集めて、新しい組織結成を前提としたトレーニングプログラムなども動いています。
同センターが実施する研修の最大の特徴は、同社の事業目標や教育目標の達成を踏まえ、明確にゴールを設定した内容であることです。例えば、「データアナリスト講座」は、同社のグループ会社に設置予定の新部署でメディア事業のデータ分析を行うエンジニアの育成を目的にしています。参加者は、指定されたUdemy Business講座(Google BigQueryとSQLを学ぶもの)を受講後、データ分析の実践的な集合研修に週1回、約3か月間参加。修了後、新部署の配属となる予定です。
Udemy Businessと集合研修を組み合わせたハイブリッド研修を行う理由を次のように木村さんは述べます。
「個別最適な学びを可能にしたいと考えました。参加者によって、データ分析に関する知識やスキルは差がありますが、事前にUdemy Businessを受講し、そのレベルをそろえた上で集合研修を行えば、研修を効率よく、かつ効果的に行えると考えました。Udemy Businessでは、既に習得している内容はスキップすればいいですし、逆に理解が不十分な内容は繰り返し視聴することができます。また、業務が忙しいエンジニアの研修時間の確保は、大きな課題でしたが、Udemy Businessであれば、自分の都合に合わせて学べると考えました」
小枝さんも自分の都合のよい時間に視聴できるUdemy Businessを組み合わせることによって、第一線で活躍するエンジニアが研修に参加しやすくなったと話します。
「座学による集合研修が60時間もあると伝えると参加が難しいという方もいますが、その半分をUdemy Businessにすれば、自分のスタイルで学べます。こまめに始業時間中に視聴する人もいれば、週末にまとめて視聴している人もいます。また、そうした個人の受講状況も我々が管理できるのもUdemy Businessのよいところだと感じました」
同センターは、研修の参加者と定期的にオンラインで面談を行い、受講の進捗を確認したり、学習が難しい箇所などを確認したりと、Udemy Businessの学習支援も行っています。学習につまずきがあれば、社内研修の講師や社内の有識者にその情報を共有し、技術的な相談に答えています。また、社内チャットサービスに参加者のグループを作り、参加者同士が情報を共有できる場も設けました。同センターの提供する研修は、勤務時間内に設定されていますが、業務の都合で研修の参加や学習時間の確保が難しいようであれば、参加者の事業部の上長とも相談し、業務の調整も行っています。
そうしたきめ細かい支援を行いながら、将来的な成長事業に貢献できる人材を育成したいと、小枝さんは話します。
「本センターが研修を企画・運営するだけでは、社員が学び続けることは難しいと感じています。『研修内容と自分のレベルが合わない』『業務が忙しくて学習時間が取れない』といった悩みを、解消できる仕組みをつくることが重要です。事業目標に紐づいた研修を実施していることを全社的に告知し、参加者の所属部署にも理解も得られるような体制を整え、会社全体でエンジニアのリスキリングを支援したいと考えています」
エンジニアだけでなく全社員が、自由に学び続けられる環境の構築を目指す
最後に、今後のUdemy Businessの活用について小枝さんに聞きました。
「Udemy Businessを、汎用スキルのトレーニングにも活用することを検討中です。例えば、テクニカル・ライティングのスキルです。当社では、エンジニアがブログなどで自分の思いを発信する機会が増えているため、そうしたスキルを学んでほしいと考えています」
現在、Udemy Businessの利用は、同センターが実施するハイブリッド研修の受講者のみですが、意欲のある社員の自己学習ツールとしてもUdemy Businessを活用してきたいと、木村さんは語ります。
「自分の興味・関心に応じて学びを進めたい社員にも、業務時間外に活用できる自己学習ツールとして利用してもらうことも考えています。さらに、個人に加えて、事業部やゼミ単位で、必要な学びを習得するためにUdemy Businessを利用することも検討中です。現在、本センターではエンジニア向けの研修の企画・運営を行う組織ですが、ビジネス職やクリエイティブ職の社員向けにも全社横断の研修を用意し、全社員が自律的に学べる環境を整備していきたいです」