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ウィズコロナ時代の人財育成DX
-ソフトバンク社に学ぶ人財育成・活用戦略-

導入事例
ソフトバンク株式会社 ソフトバンク株式会社
導入企業情報
企業名
ソフトバンク株式会社
業種
情報・通信業
従業員数
単体:約17,300人 連結:37,821人 (2020年3月31日現在)

移動通信サービスの提供、携帯端末の販売、固定通信サービスの提供、インターネット接続サービスの提供

企業におけるDX推進が叫ばれる中、それをリードする人材のスキルやマインド育成の重要性が増している。このコロナ禍では、デジタルリテラシー格差は顕著に表れている。本講演では、ソフトバンク株式会社で採用・人材開発などを担当する源田泰之氏と株式会社ベネッセコーポレーションでオンライン学習ツールUdemyの事業責任者である飯田智紀氏が、ソフトバンクでの人事戦略・施策を紹介しながら、今後の人材育成の未来像について語った。

画面右: ソフトバンク株式会社
    人事総務統括 人事本部 副本部長 兼 採用・人材開発統括部 統括部長 兼 未来人材推進室 室長 兼 グループ人事統括室 室長 源田 泰之氏
画面左: 株式会社ベネッセコーポレーション
    大学・社会人事業開発部 部長 (Udemy事業責任者) 飯田 智紀氏

自律型人財を育成し支えるオンライン学習ツール「Udemy」

教育、生活、福祉、語学のリーディングカンパニーとして、家庭学習から小中高校、大学、社会人まで、幅広い領域の教育事業を展開しているベネッセコーポレーション。同社が2015年より事業パートナーシップを締結したのが、社会人教育を進化させるオンライン学習ツールのUdemyだ。Udemyは2010年にアメリカでスタートし現在は、60言語以上、世界で3500万人以上の学習者が学んでいる。プログラミングやマーケティングなど13万以上の動画講座が公開されているオンライン学習プラットフォームである。

コロナ禍ではオンライン学習が加速。Udemyでは、1日あたりの受講者数が前年比200%増、講座受講率も前年比400%以上増など、オンライン学習者数も学習量も大幅に伸びている。学習内容も、リモートワークの環境に合わせた新たなスキルセットに変化しているといい、また、クラウド化・データ分析・AI活用など、DX時代に必要な学びも大きなトレンドだ。

株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部部長でUdemy事業責任者の飯田智紀氏は「コロナ禍で、自ら人生を切り開く力や自律型人財の重要性を皆さんも強く認識をしたのではないでしょうか。今あるスキルを伸ばす“スキルアップ“だけではなく、今までのスキルにプラスアルファで新たなスキルを習得していく“リスキル”の概念がより重要になっています」という。

Udemyの特徴の一つがCtoCという事業モデルだ。「学びたい人(受講生)」と「教えたい人(講師)」をオンラインでマッチングするプラットフォームになっている。現在、Udemyには5.3万人以上の講師が在籍し、3500万人の学びを支援している。

2019年6月からは、法人向けサービスのUdemy for Businessをリリース。個人向けサービスは1講座ずつ購入する形だが、法人向けサービスは5000コンテンツが定額で受け放題だ。

「Udemy for Businessでは、ITやデータ活用、ビジネスコミュニケーションスキルといったものを幅広くそろえています。自分で自由に選択しながら最先端で高品質な学習を行うことが可能です。Udemy for Businessは、昨年6月のリリースからこの10月までで250社以上の企業に採択していただきました。採択理由は『DX推進のためのDX人財育成』『働き方改革・生産性改善』『自律型人財育成』『内定者・新人研修』などがあります。新型コロナウイルスの影響を受けて新人・内定者研修ができなくなり、対面研修をオンラインに切り替えたことを契機に、人材育成そのもののDX化を進めている企業が増えていると感じています」

伸ばしたいスキルを自由に選べる手挙げ研修が充実

AI・IoT・ロボットなどの最先端テクノロジーを活用し、従来の通信会社のビジネスモデルを超えてさまざまな産業分野で革新的なサービスを提供しているソフトバンク。同社の源田泰之氏は、テクノロジーを活用した人材育成の事例や、DX人材の育成方法を紹介した。

「当社の人事施策のコンセプトは『自ら手を挙げた人に機会を提供する』こと。自律的な人材や、自発的に自分で行動できる人材を育成したいという思いがあるからです」

研修は「ソフトバンクユニバーシティ」という、ソフトバンクグループ各社が利用できる学びの場を設けている。約80コースある集合研修に加え、オンライン研修やeラーニングを組み合わせて実施。集合研修は、「ファイナンスの知識を学びたい」「後輩へのティーチング視点でのコミュニケーションスキルを上げたい」など、自分自身が伸ばしたいスキルを自由に選べる「手挙げ研修」、新入社員や新任管理職などを対象にした「階層別研修」、部門が抱えている課題に取り組む「部門向け研修」の三つで構成されている。2019年度は、集合研修はのべ1万人、eラーニングは約3万人が活用。集合研修のうち、手挙げ研修が65%と大部分を占めている。

ソフトバンクの研修制度で特徴的なのは、社内認定講師制度を導入していることだ。経営企画本部長がファイナンスについて教えたり、営業部門でリーダーを長くしていた人がリーダー研修を行ったりするなど、約130人の認定講師が実践的な学びを届けている。

「コロナ禍であっても『学びを止めない』ことを宣言し、受講機会を提供し続けています。集合研修をオンライン化してオンライン上でも対話できるようなセッションを設けたり、Udemyのような外部のオンラインコンテンツを一部導入したりと、学びの幅をさらに広げています」

続いて源田氏は、DX人材の育成の事例を紹介した。真の事業開発人材になるために取り入れているのが、事業プロデューサー制度だ。事業プロデューサー人材育成の取り組み概要について源田氏は「まず、人材要件から育成の対象者を決めます。そしてOJTやOff-JTなどを組み合わせ、最後にスキル測定を行う。これをぐるぐる回していくという施策を、DXを推進する部門と人事部門が一緒になって行っています」と説明する。

「一般的な法人営業は基本的に営業活動を中心に行うのに対し、DXの事業開発職は、成果が見えづらく、事業企画のフェーズから開発や運営、全体のプロジェクト管理など、多岐にわたる能力が求められます。つまり、これまでの法人のITコンサルとは違ったスキル・経験が必要になってきます。それは『新たなビジネスモデルを構築するアイデア力』『会社の価値を事業化する、経営に関する知識と実行力』『ステークホルダーとの関係を構築・維持するコミュニケーションスキル』『利益を稼ぐ力』です」

手挙げ文化の醸成は「やるかやらないか・粘り強くやり続けるか否か」

ここからは、源田氏と飯田氏によるディスカッションが行われた。

飯田:私は2015年にソフトバンクからベネッセに転職しました。この5年間、ソフトバンクは主力のモバイル事業の他にも、新規事業の展開など、社員を取り巻く環境に大きな変化があったと思います。5年前と現在を比較して、社員の人材育成のあり方について変わった点、または変わらない点はありますか。

源田:まず、変わらないことは人材育成ポリシーの「自ら手を挙げた人にチャンスを」という考え方です。例えば、2017年から自身のスキルアップにつながる副業を許可しています。また、フリーエージェント(FA)やジョブポスティング(社内公募)で希望のキャリアに自ら挑戦できる制度を拡充させてきました。

変わったところは二つあります。一つ目は、事業の多様化です。ここ5年でソフトバンク自体が大きく変わりました。ソフトバンクグループ株式会社はAIへの投資を推進し、ソフトバンク株式会社は通信事業を軸として、ヤフーなどと連携してサービスの幅を広げています。事業が多様化すると同時に、社員が望む学びも多様化してきています。二つ目は、個人の価値観の多様化です。個人の価値観やニーズの変化に合わせて、成長につながる施策を次々に推進してきました。

ソフトバンクの人事のポリシーは「人と事業をつなぐこと」です。事業内容も個人の価値観も変わる中で、どのように人と事業をつないでいくのか。それに対して柔軟に対応できていたかが問われた5年間だったと思います。

飯田:事業の多様化と個人の価値観の多様化という激しい変化が起きる中で、最も注力したことはなんですか。

源田:社員の意見をよく聞く、ということです。研修制度一つとっても、アンケートを毎年取り、「社員が望む学びはどういうものか」というニーズを把握してから「それをどうやって実現するか」を考える、という順番で行います。もちろん、会社が「(社員に)こうなってほしい」という思いもありますが、基本的に社員のニーズありきですね。

飯田:変わらない部分として挙げていた、社員主体でやるという手挙げ制の文化は、醸成したくてもなかなか難しいことだと思います。文化を根付かせるコツはありますか。

源田:コツはありませんね。やるかやらないか、粘り強くやり続けるかどうかだと思います。手挙げのポリシーに共鳴してくださって「うちでも社内認定講師制度をやりたい」という企業もあるのですが、「でも当社では多分手が上がりません」とおっしゃるんです。でも、それはやってみないとわからないことですよね。まずは小規模で始めてみたらいいと思います。研修の内製化も、講師ができる人に最初に目星をつけておいたり、人事部長が自ら講師になったりすればいい。あとは、社員がどういう研修だったら受けてみたいと思うか、意見を聞くこともポイントだと思います。

飯田:ソフトバンクさんの社内コンテンツの充実度は目を見張るものがあります。一方、Udemyを含めた社外コンテンツも積極的に活用されていますが、社内コンテンツと社外コンテンツの役割は、どのように棲み分けていますか。

源田:集合研修の内訳は、内製が9割、外注が1割です。内製のうちのほとんどを社内認定講師が担当しています。社内認定講師制度がスタートした11年前は、5%ほどでしたが。

社内認定講師の利点は、実際にソフトバンク社内の事例に合わせたコンテンツを展開しているので、実践的であること。また、受講後にもコンタクトを取りやすいので、実務の段階でつまずいたときに相談できることも強みです。受講者アンケートによると、社内の講師が行った研修の方が、数%ではありますが満足度が高いですね。

一方、社外講師のメリットは、ソフトバンク以外の他社の事例を幅広く聞くことができるうえ、その分野で先進的な内容を受講できることです。この社内:社外=9:1の割合が適正値だと思っているので、社内コンテンツを100%に近づけることはありませんし、社外コンテンツの割合を増やすべきとも思っていません。受講者の声を聞きながら、会社ごとのベストミックスを決めていくことがベストですね。

飯田:内製が9割というのは、イメージしていたよりも高い割合です。社内認定講師の方々のエンゲージメントの面でも、いい影響がありそうですね。

源田:おっしゃるとおりです。社員の意識も変わってきていて、金銭的な報酬のためではなく「人のために何かをしたい」という意識で取り組む人が増えてきています。社内認定講師になる上で大事なことは、経験や知識があることと、「ソフトバンクの次世代に自分が経験やスキルを伝えていきたい」という強い思いを持っていること。この二つだけです。社内認定講師制度で良い講師になったからといって、評価や賞与が上がることもありません。「ソフトバンクの次の世代を良くしていきたい」という強い思いがある人ばかりです。

また、講師としての経験の有無は重要視していません。その代わり、人前で講師として話ができるスキルやディスカッションに対して適切なフィードバックをできるスキルなど、講師スキルの習得は半年間かけてしっかりと行います。

飯田:昨今、HRテクノロジーという言葉を耳にする機会が増えています。テクノロジーを人材育成にどのように活用していくべきだとお考えですか。

源田:私は、Udemyに期待していることが一つあります。あれほどの多種多様なコンテンツを3500万人もの人が受講しています。その莫大なデータと企業の評価や異動のデータを組み合わせ、ビッグデータやAIを使うことで、学習がどのように人の成長につながるのか、また、講座の習熟度がどのようにキャリア観や仕事の実績に影響していくのかがわかるようになると面白いのではないでしょうか。

飯田:法人向けの受け放題のサービスでは、企業さまの中でどのような人が学んでいるかのデータをいただけるようになってきました。「人の育成を科学する」ところに一歩一歩近づいていると思います。

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