組織全体でUdemy Businessの利用を促進し、業務改善につなげる
トヨタ自動車株式会社
「自動車メーカー」から「モビリティカンパニー」への大変革を図るトヨタ自動車株式会社は、全社規模でデジタル人財育成を推進しています。従業員に「自律学習」を促進し、一人ひとりのデジタルリテラシーを向上させ、各部署でデジタル化を牽引する人財を増やすために活用しているのが、Udemy Businessです。今回は、デジタル変革推進室デジタル人財育成グループの皆さまにデジタル人財育成の取り組みについて、レクサス性能開発部レクサス運動制御グループの皆さまにUdemy Businessを活用した組織での学習についてうかがいました。
INDEX
広く従業員がデジタルリテラシーを学び、意欲ある人を伸ばす
トヨタ自動車は、2021年1月にデジタル変革推進室を新設し、全社におけるデジタル変革に加え、デジタル人財の育成に取り組んでいます。
トヨタが考えるデジタル化は、業務効率化や生産性向上を行うデジタイゼーションから、既存プロセスを見直すデジタライゼーション、次の百年も産業報国を続けるための会社変革を行うトランスメーション with デジタル(DX)までと幅広くあります。そのため、全従業員のデジタルリテラシーを高め、デジタルに興味・関心のある従業員を伸ばす教育を行い、将来的に各部署でデジタル化を牽引する高度人財を増やすことを狙いとしています。デジタル変革推進室デジタル人財育成グループシニアエキスパートの橋本昌幸さんは次のように説明します。
「弊社には約7万人の従業員がおりますが、より多くの従業員がデジタルについて学ぶ機会を得ることで興味・関心を持ってもらい、それをきっかけに高度な知識・スキルを自ら身につけ、デジタル人財へと成長していく環境を整備したいと考えています。」
その一環として、2023年4月から、従業員の「自律学習」を促進し、デジタルリテラシー向上を目指すためにUdemy Businessを活用しています。この自律的な学びを通じてデジタルに興味・関心を持った従業員が業務改善や市民開発を経験し、更にはソフトウェアエンジニア養成プログラム「デジタル イノベーション ガレージ(DIG)」などの高度専門人財を育成する実践研修を受けステップアップしてほしいと考えています。
Udemy Businessの組織利用が業務改善に効果あり
2023年度は、Udemy Businessの利用を希望する個人および部署にアカウントを付与していましたが、2024年度からは、デジタル化推進を目的とした学習を希望する部署に付与する方針に変更しました。2024年度は、人数の大小はあれど国内の全部門が利用しております。
組織利用を本格化した背景について、橋本さんは次のように説明します。
「2023年度に実施した利用者アンケートと業務成果の関係性を分析すると、Udemy Businessを個人で利用するよりも組織で利用した方が、『より業務成果に繋がる。』という結果が得られました(図2)。例えば、利用者アンケートでは、『新しい業務に対応できた』『業務改善の成果が得られた』という項目で、組織利用の方が個人利用を上回る数値を示していました。また、組織利用をしているグループから寄せられるGood Learning事例(受講者からの業務成果報告)を分析したところ、デジタル化推進で大きな成果を上げたケースが多く見られました」
さらに、組織利用における学習スタイルを分析した結果、いくつかの学習パターンがあり、その中でもチームでテーマを決めて学ぶ「チーム型学習」が最も学習量が多いことが分かりました(図2)
2024年6月に実施した利用者アンケートの結果でも、「学習のきっかけやサポートが増えている」と答えた割合が増加。「業務改善の成果が出ている」と回答した割合は前年より8ポイント増加しており、組織利用が効果的に機能していることが確認されました。
組織で学習を進め、車両運動制御の新価値創造に挑む
2024年度からUdemy Businessを組織利用し、成果を上げている部署の一つが、レクサス性能開発部レクサス運動制御グループです。同グループは2024年4月に新設された部署で、将来のレクサスに搭載される車両運動制御システムに新たな価値を創造することを目的とした業務に従事しています。同グループの内田晶人さんは、前部署でも業務で必要なスキルを習得するためにUdemy Businessを活用していました。新しい部署でもその必要性を感じ、組織利用を決めました
「自動車業界では、デジタル化や知能化が急速に進んでおり、従来の知識や経験だけでは新たな価値を生み出すのが難しい状況です。デジタルの専門部署に相談しても、多忙で十分な対応を得ることが難しいため、私たち自身がスキルアップをしようと考えました」(内田さん)
同グループでは、月1回の定例会で学習方針を決め、メンバーはUdemy Businessの中から関連講座を受講。定例会や週1回の業務ミーティングで、学びの進捗や得られた知見、おすすめの講座などを共有しています。
同グループの加藤光晴さんは、スマホアプリの開発について学ぶことからスタートしました。グループ内にスマホアプリ開発の経験者がいないため、Udemy BusinessでAndroidアプリ開発やJava、生成AIに関する講座を受講しました。
「これまで専門技術を学ぶ場合、分厚い書籍を読み込んで例題を解いてから、実践に取り組んでいたため、学びを実務に生かすまでにかなりの時間を要していました。しかし、Udemy Businessを活用すれば、短時間で効率的に学習でき、しかも実務にすぐ活用できました。例えば、スマホアプリで動画を再生する技術を学んだ時は、関連するセクションを視聴し、その画面を見ながらスマホで再生できる動画を作ってみました。また、Javaなどのプログラミング言語を習得する際にエラーメッセージの対処に苦労しましたが、Udemy Businessの講座で生成AIを活用すれば大幅に修正時間を短縮できることを学びました」(加藤さん)
さらに、Udemy Businessのよさについて加藤さんは次のように話します。
「Udemy Businessは高品質な講座が揃っており、クオリティのばらつきが少ない点が魅力です。講座を選ぶ際にはレビューを参考にしていますが、それも信頼できる書き込みが多く、これまで受講した講座が『外れた』と感じたことはほとんどありません」
内田さんと加藤さんは、学習を始めて1か月ほどで、社内のテスト試乗会で使用できるスマホアプリを完成させました(図3)。
「習得したスマホアプリ開発の技術によって、車両に搭載する既存のECU(自動車の電子機器を制御する組み込みシステム)の検討サイクルを短縮することもできるようになりました。今後も組織での学習を継続していきます」(内田さん)
月1回、個人とグループの学習レポートを配信
現在、Udemy Businessは組織利用を基本としていますが、部署内での学習に生かすほか、従業員が好きな講座を自由に受講することも可能です。同社は社内のDXを担う人財像を14ポジションに分類し、それぞれの職種に必要な講座をUdemy Businessのラーニングパス機能で設定。従業員が目指すポジションに向けて効率的に学習を進められるようにしています。
デジタル変革推進室デジタル人財育成グループでは、Udemy Businessの活用を促進するため、Udemy Businessを受講している従業員に個人レポートの「成長記」を月1回メールで配信しています。「成長記」には、該当月の受講時間や受講時間のランキング、各ポジションのラーニングパスで設定した講座の受講状況などが表示されます。グループ管理者には、メンバーの学習状況やグループごとの受講時間のランキングをまとめたレポートを月1回提供しています(図4)。
「成長記」とグループ管理者向けのレポートは、受講時間、受講状況に応じて変化する仕掛けを入れ、あえて仕掛けが入っていることを公表せず、その変化に気付いてもらうことで、楽しみながら学習状況を確認できる仕組みにしました。
「学習のモチベーション向上につながればと、常に改善を続けています」(橋本さん)
社内SNSに設けたUdemy Business専用のコミュニティでは、おすすめ講座の紹介や利用者同士の意見交換が活発に行われています。デジタル変革推進室デジタル人財育成グループの今村亮さんは、次のように話します。
「質問や相談を受けつけるスレッドがあるのですが、我々が書き込まなくても。従業員同士が問題解決に取り組む風土が生まれています。また、弊社では従業員のデジタルスキルを認定するデジタルバッジ制度を導入していますが、バッジの認定試験に合格をしたら、それを報告し合う掲示版も活発に利用されています」
デジタル人財育成グループでは利用者アンケートを年2回実施し、そのデータを基に、従業員の学習状況や未受講者の割合を確認する「ヘルスチェック」と、デジタルバッジ取得者数やGood Learning事例の数などを確認する「パフォーマンスチェック」を行っています。特に自律的な学びの浸透と業務改善への効果の2つの視点から状況を確認し、今後の施策検討に役立てています。
可視化された学習データを戦略的な人財育成に生かす
Udemy Businessを全社で導入して1年半が経過しました。管理者である橋本さんが感じるUdemy Businessの魅力は、従業員の学習データを細かく取得できる点です。
「誰が、いつ、何の講座をどれくらい受講しているかというデータは、弊社にとって大きな財産です。このデータを活用することで、7万人の従業員一人ひとり対して、最適なタイミングで最適な研修を提供できるようになると考えています。例えば、受講履歴から『この従業員はデータサイエンスに興味を持ち始めている』と分かれば、その従業員にステップアップ可能な研修を案内できます」
個別最適化された研修は、毎月個人に配信される「成長記」の上部で案内しています。例えば、プログラミングやサイバーセキュリティ関連の研修を行う際、それに関連するUdemy Businessの講座を受講している従業員の成長記に研修の案内が記載されます。
同社ではDXビジョンとして「お客様一人ひとり、従業員一人ひとりに『動的』な良い体験を提供する」ことを掲げ、今後もUdemy Businessの利用によって可視化された学習データを活用して従業員の成長を加速させ、戦略的な人財育成を進めていく方針です。
「従業員がそれぞれの興味・関心、経験を生かして自ら学び、成長できる環境を整えることが、当部署の役目です。Udemy Businessでの学びを業務で実践する流れを構築し、個人の成長を会社全体の成長につなげていきたいと考えています」(橋本さん)