Udemy Businessを全社研修や職位別研修に活用し、従業員のリスキリングを支援
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
トヨタグループに属するトヨタテクニカルディベロップメント株式会社は、知的財産事業および計測シミュレーション事業の専門企業です。「100年に一度の大変革の時代」を迎えている自動車業界では、「電動化」「自動運転」などの技術革新が急速に進み、同社の従業員には最新技術の習得が求められていました。そこで、全社研修や職位別研修、技術教育、自己啓発の教材としてUdemy Businessを導入し、従業員の技術力、ビジネススキル、マネジメントスキルの向上を進めています。今回は、コーポレート管理部人事室プロフェッショナルエキスパートの立澤洋直さんに、同社の人財育成とUdemy Businessを活用した研修についてお話をうかがいました。
INDEX
技術革新が進む自動車業界を支えるために進化が必要
トヨタテクニカルディベロップメントは、計測技術・ソリューション開発・提供を行う計測シミュレーション事業と、特許情報、技術情報全般の調査解析や、外国への特許出願などを行う知的財産事業を担い、トヨタ自動車をはじめとするトヨタグループ各社に貢献しています。
自動車業界では、カーボンニュートラルへの対応が迫られ、「CASE」(Connected/コネクティッド、Autonomous/自動化、Shared/シェアリング、Electric/電動化)と呼ばれる新しい領域における技術革新が進んでいます。そうした状況を踏まえ、同社は、2030年に向けたビジョンとして「統合ソリューションを駆使して世界で戦うエンジニア集団となる」を掲げ、ビジョン達成に向け、様々な施策を策定・推進しています。数ある施策の中でも、技術力向上を中心とした社員の総合的なスキル向上が重要になってくると、コーポレート管理部 人事室プロフェッショナルエキスパートの立澤洋直さんは語ります。
自動車開発が高度化・複雑化する中、時流に合わせた技術を速く習得することが重要
自動車開発の高度化・複雑化への対応に、新たな領域への挑戦。次のステージに立ち向かうためには人財育成の見直しが急務だったと、立澤さんは話します。
「それまでの自動車開発は、自動車の3大性能の『走る・曲がる・止まる』に関する機械系が中心でした。しかし今や、先進安全技術や自動運転技術などのソフトウェア開発が重要な位置を占めています。例えば、これまで長い間、自動車に搭載されている各種制御システムの開発には、C言語が用いられていましたが、自動運転車の開発ではデータサイエンスやAIを駆使するため、Pythonや、関連するライブラリの知識・経験が必須となってきます。」
自動運転車の実用化に際しては、安全性や信頼性を確保するため、膨大な数の試験を行う必要がありますが、現実的には試験項目の数が天文学的な数字となるため、すべてを網羅することは不可能です。そのような状況もあり、自動運転車の開発においては、仮想の車両をコンピューターの中で試験走行を行うなど、シミュレーションツールを活用した開発環境が必須となっています。
「弊社の計測シミュレーション事業では、お客さま個々の事情に合わせ、最適なソフトウェアを組み合わせた開発環境を提供していますが、迅速・俊敏に、時流やお客さまの要望にお応えするため、技術者の成長速度をより上げる必要がありました」(立澤さん)
そうした自動車開発の在り方が大きく変わる中、従業員の教育体制を強化することにしました。
「これまで弊社では、全社教育、技術教育、自己啓発支援と、大きく3本柱で人財育成を進めてきました。加えて、個人で社外のセミナー参加や書籍での学習をしていた従業員もいました。しかし、それだけでは次々と登場する新しい技術の習得が追いつかないと感じ、必要な技術を個別に学習できるオンライン学習サービスを検討したところ、Udemy Businessに出合いました」(立澤さん)
Udemy Business導入の決め手になったのは、トヨタ自動車での導入実績に加え、多様な講座、特にIT系の講座が充実している点、そして従業員が繰り返し学べる点だと、立澤さんは述べます。
「弊社の扱う事業領域は幅広く、計測シミュレーション事業だけでもソフトウェア、ハードウェア、シミュレーション、メカトロ系などがあり、様々な技術を用いています。そこで、従業員が必要なスキルや知識をいつでも学べる環境を用意すべきだと考えました。Udemy Businessは、忙しい従業員でもスマートフォンで通勤時間に受講でき、理解が浅い箇所は繰り返し確認できる点がよいと感じました」
研修の教材としてUdemy Businessを活用
同社では、2023年2月からUdemy Businessを導入して、全社員約1,000人にアカウントを付与し、全社教育と技術教育の教材として活用しています。
全社教育では、ビジネススキル系の教育や職位別研修、新人研修などを実施しています。
全社教育は、Udemy Businessの講座が中心ですが、社内で制作したオリジナル講座もUdemyに組み込み、社員に受講してもらっています。受講する講座は、人事室と各部署のスペシャリストが吟味し、自社に合う講座を選びました。全社員が必須受講となるレベル1(基礎知識習得の講座)は、コンプライアンスや品質、トヨタ生産方式、DXのリテラシーなどの講座を指定しました。レベル2の受講は希望制で、従業員の関心が高いDXやAI、データサイエンス、ソフトウェアなど最新トレンドに関するテーマも取り揃えています。
レベル2以降の講座では、実務につなげるため、知識だけではなく、実際に手を動かして、アウトプットを提出してもらう形式としており、Udemy Businessの講座の視聴だけでなく、社内講師によるチャットでのサポートや、定期的なオンラインサポート研修を実施するなど、身近な仲間とともに学ぶ環境を整備していると、立澤さんは話します。
「例えばレベル2のソフトウェア系の講座では、講座内容を各自の職場で活用できるようプログラミングの課題を受講者各自が設定しますが、経験の少ない人も学べるよう、講座でわからなかった点をその分野に詳しい技術者に質問できるオンラインのオフ会も開催しました」
職位別研修では、Udemy Businessを研修の事前課題として利用しています。
「例えば、管理職向けの研修では、参加者にUdemy Businessで部下の指導法などに関する講座を事前に受講してもらい、研修当日は、受講した講座について少人数のグループで討議する形にしました。一昔前でいう「読書会」での課題図書がUdemyの講座に取って代わったイメージです」(立澤さん)
一方、技術教育では、部署ごとにUdemy Businessを用いた専門的な教育を行っています。
「各部署の求めるスキルやビジネス課題は異なります。そこで、各部署のマネージャー層をUdemy Businessに関する学習の管理者に指名して、その部署で受講すべきUdemy Businessの講座の選定と、ラーニング・パスの設定、さらに、部署オリジナルのコンテンツを企画・制作し、部署内での受講促進を担当してもらっています」(立澤さん)
多様な講座が用意されているUdemy Businessを研修の教材に活用することで、事業戦略や業界のトレンド、従業員のニーズに合わせた研修をすみやかに実施できるようになりました。
同社では、自己啓発の学習にもUdemy Businessを活用しています。
「資格取得や語学の学習にUdemy Businessを活用している従業員が多くいます。例えば、AWSの認定資格のうちSAP(Solutions Architect Professional)は、大規模なシステムの設計・実装の知識やスキルを証明する、難易度が高い認定資格です。個人で外部研修を受講すると高額な費用がかかるので、Udemy Businessで勉強してSAPに合格した従業員から『社外セミナーを受講することなく資格を取得できてよかった』といった声がありました。社外セミナー受講となると、希望者全員に受講してもらうことは難しいので、大変たすかります」(立澤さん)
従業員の学ぶ意欲をさらに高めることが課題
従業員の学ぶ意欲をさらに高めることも課題だと、立澤さんは話します。
「自己啓発にUdemy Businessを積極的に利用するアクティブユーザーは、全従業員の約3割程度です。弊社の事業戦略の実現に向けて、一人ひとりの学びが不可欠であることを理解してもらい、個と組織の成長を図っていきたいと思います」
そのためには、部下のキャリア形成を図る管理職を支援していきたいと、立澤さんは述べます。
「弊社では部署ごとにスキルマップを用意し、定期的に実施する1on1で、管理職が部下の現在のスキルと目標を確認しています。今後はそうした場で、部下が目指すキャリアの道筋とその達成に必要な学びを、管理職が部下と一緒に検討し、部下に自律的な学びを促せるようにしたいと考えています。管理職にも、部下のキャリア形成を支援できるように学び続けることの意義を伝えていきたいと思います」
一方で、今後はUdemy Businessのライセンス付与や活用ついて、より検討をしていく必要があると、立澤さんは述べます。
「私は教育チームに異動する前は、中途採用を担当していましたが、全正社員にUdemyのカウントを付与していると応募者に伝えると、それはすごいですね!という反応がほとんどでした。世間では全正社員にアカウントを付与している会社は少ないようですねこの点はアクティブユーザーの割合を勘案しつつ、適性化した活用を考えていく必要はあります」
アクティブユーザーの割合を100%にするのは現実的ではありませんが、この値をもっと高くするにはどうしたらよいか、今後の展望について、立澤さんは述べます。
「社員の自己啓発意欲ももちろん、非常に大切ですが、会社としては、人財育成戦略をより具体的に策定し、語弊を恐れず言うと、社員がもっと学ばざるを得ない環境を作ることも急務だと思っています」
全正社員にUdemyアカウントを付与してから2年目となりますが、Udemyに対する今後の期待について、立澤さんは述べます。
「Udemyの活用場面は3年目に入り、より考えていく必要がありますが、Udemy Businessは従来の弊社の社内教育体系と比較すると、投資コスト以上の大きな変革をもたらしてくれました。学びの意欲が大きな人は、どんどん新しいスキルを身に着けてくれていますし、これはUdemy Businessが提供してくれるコンテンツの質、量が、なせるものだと思っています。今後ともよろしくお願いします」